田中教育研究所について
田中教育研究所について
田中教育研究所は、初代所長田中寛一により「正しいアセスメントに基づく適切な教育」という理念のもと1948年に設立されました。76年前のことです。設立以来、他の組織や団体から助成を受けることなく、田中ビネー知能検査の改訂を定期的に続け、また、幼児心理講習会や田中ビネー知能検査講習会などの開催等を行うことにより自立自走で今に至っています。活動の主軸の一つが田中ビネー知能検査です。新型コロナの影響を大きく受けましたが、2024年度に田中ビネー知能検査VIとして21年ぶりに改訂される運びとなりました。これまでの改訂と同様、時代の変遷、子どもの変化に合わせて新作問題の作成、基準の見直し等を行い、新たに標準化に至りました。また、国際貢献ということでは、少し遡りますが、2020年に名古屋大学とモンゴル国立教育大学により田中ビネー知能検査Vをベースとした「モンゴル版田中ビネー知能検査」が開発され、現在、モンゴル国内で実際に活用されています。田中教育研究所は監修を務めました。
田中教育研究所がこれまでの活動の歴史を踏まえた上で、これからどのような展開をしていくのか。今、大きく問われている状況にあると認識しています。改めて、「子ども」や「大人」を取り巻く日本の状況を振り返ってみる時に、「少子高齢化」「Society5.0」というキーワードに行き着きます。田中教育研究所が設立された1948年の出生者数は2,682千人(合計特殊出生率4.40人)でした。2023年の出生者数は727千人(合計特殊出生率1.20人)です。これに加えて、平均寿命の伸び(男性81.05歳、女性87.09歳;2022年時)により65歳以上の占める割合はますます増えつつあります(29.1%;2023年時)。少子高齢化の大きな波が日本全体を覆っています。一方で、昨年から今年にかけて生成AIの発展は目覚ましいものがあります。日本が目指す未来社会の姿であるSociety5.0という新しい時代に突入し、ロボット、自動運転、機械翻訳なども発展し続けています。まさに、私たちを取り巻く生活や社会が大きく変わる、その真っ只中に私たちは、今、います。急速な少子高齢化、Society5.0の展開にどのように適応していくのかは日本全体の課題でもありますが、教育、医療、福祉、産業、司法領域等における心理支援に関わる人・組織の大きな課題です。そして、田中教育研究所が「持続可能」な形でこれらの領域で貢献し続けるためには、今までの形に加えて、新たな形を追求し、具現化していく必要があります。
田中教育研究所の所員、評議員、理事一同、これからもこれらの課題を乗り越えて、研究所としての存在意義を少しでも示し続けていきたいと思っています。どうかご支援を賜りますよう心よりお願い申しあげます。
田中教育研究所は、終戦間もない1948年3月に、田中寛一を初代所長として設立されました。戦後の社会の混乱期に当面して、国の再建にはまず教育の復興が必要であり、それには教育の科学化による他はないとの信念のもとに設立されたのでした。わが国の民間の教育研究所としては、もっとも古い歴史を持つ研究機関です。
その後、1959年には、当時の文部省学術国際局(現、文部科学省研究振興局学術機関課)管下の財団法人として認可されました。教育の科学化への貢献を願い、創立以来、現在に至るまで、大学の教員、所内の研究員など多数のスタッフを抱え、知能を中心とした基礎研究、各種の心理検査の研究・開発、教育相談、さまざまな講習会の開催など幅広い活動を行っています。
代表的な心理検査の一つとしては、1947年に発表された「田中びねー式智能検査法」が挙げられます。本検査は定期的に改訂を重ね、2024年に最新版の「田中ビネー知能検査VI」を発刊いたします。日本を代表する個別式知能検査として、現在も医療、教育、福祉などのさまざまな分野で幅広く活用されています。
公益法人制度の施行に伴い、田中教育研究所は、2012年4月1日に「一般財団法人田中教育研究所」として新たにスタートしました。学術の発展並びに教育文化の向上に寄与するべく、より一層事業の充実・振興に努めています。
初代所長 田中寛一
田中 寛一(1882~1962)
東京文理科大学(現、筑波大学)名誉教授 文学博士
田中寛一は、1882年1月20日、岡山県赤磐郡にて誕生しました。
幼年時代から利発でスポーツも得意な子どもだったようです。
田中の初期の研究は主に基礎的実験研究に関するもので、心的作業能率や疲労に関する内容に興味を持っていました。その後、師範学校で教壇に立っていた経験から、より客観的な手がかりをもとに教育を建設しようと考えるようになり、教育測定の研究を始めます。つまり、“正しいアセスメントに基づく適切な教育”をめざしていたと思われます。この時期の代表的な著書『教育的測定学(1926年)』『教育的統計法(1928年)』などは、教育科学化の先駆けとなった著作といえます。
1935年頃以降は、知能に関する研究を精力的に行い、1938年から5年間を費やして1943年に「田中びねー式智能検査法」を完成させます(発刊は1947年)。
1948年には田中教育研究所を設立し、若い研究者の育成にも尽力しました。以後、研究所を基盤とする研究、教育啓発などの功績により、心理学者としては初めて、紫綬褒章(1957年)、文化功労賞(1960年)の顕彰を受けました。
歴代所長
初 代 田中 寛一
第二代 鈴木 清
第三代 間宮 武
第四代 田中 英彦
第五代 杉原 一昭
第六代 杉原 隆
第七代 大川 一郎
【理事】
大川 一郎 埼玉学園大学教授 筑波大学名誉教授
杉原 隆 東京学芸大学名誉教授
中村 淳子 松蔭大学特任教授
野原 理恵 田中教育研究所研究員
芹澤 奈菜美 田中教育研究所研究員
【監事】
河井 英子 前 武蔵丘短期大学教授
髙階 則子 田研出版株式会社社員
【評議員】
今井 さやか 株式会社Clair代表取締役
植松 紀子 前 日本大学講師
神田 尚 日本老年行動科学会常任理事
杉山 哲司 日本女子大学教授
鈴木 朋子 横浜国立大学教授
高橋 一紀 田研出版株式会社代表取締役
田中 英登 松山大学特任教授 横浜国立大学名誉教授
中本 浩揮 鹿屋体育大学准教授
野々村 新 松蔭大学客員教授 前 日本大学教授
堀口 康太 白百合女子大学准教授
松尾 直博 東京学芸大学教授
山際 勇一郎 東京都立大学客員教授
渡部 玲二郎 茨城大学大学院教授
(2024年6月現在)